空気を読むことは大事かもしれないけれど…
ストーリー
できないことは、できません。
やりたくないことも、やりません。他人に感情移入できない26歳の三葉雨音は、
それを長所と見込まれ、お年寄りの病院送迎や
お見舞い代行の「しごと」をはじめる。
聞き上手な80代セツ子、
手術の付き添いを希望する40代の好美など
依頼人は様々。空気を読まない三葉だが、
行動に変化がみられていく――。
めんどうだけど気になる三葉から
目が離せない。
他人の言動の裏にある気持ちを忖度したり感情移入することができない、いわゆる「空気を読む」ことをしない主人公の三葉雨音。空気を読んで精神的に疲弊しっぱなしの私(なんつって、読めているつもりだけど読めていないかも…?)には、ヒヤヒヤするような羨ましくもあるような…。
建前だらけの社会では冷たいという印象を与えるのかもしれない。母親の顔色を窺いながら幼い頃から自慢の良い娘でいた雨音の姉と、母親にとって良い娘ではなかった雨音との、本音をぶつけあう場面が印象的で哀しかった。
一方で、彼女のその特性をありがたい、魅力的だ、良さだと感じる人もまたいるわけで、お見舞い代行の「しごと」が彼女にピタッとはまるように、受け入れてくれる人たちもいる。彼女の性格を「面倒くさい」と言いながらも。そんな周りの人や依頼人たちと接するうちに三葉自身も少しずつ変わっていく。根本は面倒くさい彼女だけど、私は本当に他人の気持ちが分からないからではないのだと思う。
何というか、空気を読むことが当たり前みたいになっているし、それがこの社会を生きていくには必要なんだけれども、空気なんて見えないものを気にしてそれが本当に正しいのか、間違ってるかもしれないと、いったん立ち止まって考えるべき時もあるんじゃないかなと気付かされた気がする。
そして、彼女のような特性を、別の特性に置き換えたとしても良い面と悪い面があるはず。それぞれの立ち位置を尊重しあえる社会がいいなぁと思う。
これまで読んだ寺地さんの作品とは少し違う受け止め方になったかなぁ…。今までは一方的に背中を押してもらっているような気がしていたけど、そんな優しさばかりじゃないぞというか。自分の勝手な感想ですが。
いずれにしても次の作品を読むのも楽しみです。
